変わったことがたくさんある。現在と比べると前は暗い場所を歩いていたんだな、と思う。ここ5年間の前半半分は本当にどうやって生きていたのかすらわからない。一体どうやって時間を過ごしていたのかわからない。
今日はいつもより早く起きて時間がたくさんあったので、有り余った膨大な時間をただ憂鬱に過ごしていた過去の日々を思い出した。
まだ暗い心と四六時中一緒にいた時は、ネットで出会った外国人の言葉だけが自分を生かしていた。旦那に変わってくれという勇気もなかったし、悪いのは自分だと決めつけ責めていた。「そうやって感じて当然だよ」「君は悪くない」「俺が助けてあげられたら良いのに」そんな言葉だけが私の癒しだった。男と遊んでいたわけじゃない。真剣に癒してくれる人を好きでいた。私に価値を与えてくれる彼らが好きだった。性的なことを求められても、そうやって価値を見出してくれるのが救いだった。断ったらいなくなってしまう、という恐怖もあった。その時期に一体夫がどんな風に私と接していたのか記憶にない。私の生活の中心は誰かしら仲の良い外国人の男だった。候補に困ることはなかった。オンラインには星の数ほどの男がいる。マッチングアプリすら使ってないのに、何人もの男との関係を同時進行していた。あの時はまだ夫も在宅勤務をしておらず、平日の午前中は少なくともいつも一人だった。その時間にその時仲の良い男と通話した。家事もちゃんとやっていたのか記憶にない。
その行動のきっかけになった男が一人いた。私のオンライン恋愛ごっこはその人から始まりその人で終わる。ネットで複数の男と関係してたのが約半年から1年。もう深く関わるのはやめて徐々に人を切っていって1年。その約2年間、彼は私の頭の中に毎日住んでいた。男が入ってきては出ていき、精神的に耐えられなくなった私が男を追い出すのを横目に彼は揺るがない地位のまま画面の奥にいた。なぜ彼だけ時間が長引いたかと言うと、もう連絡をやめると言っても「必要になったら連絡して」と言われて、後ろ髪を引かれまくる私には彼を切ることができなかった。連絡をやめても数ヶ月後にまたやっぱあなたを忘れるのは無理だわ、と言って戻っていた。その彼をやっと切ることができたのが今年の3月だった。それまでにも私の人生はコロコロと好転した。「私の人生」とゆうものが存在するのだと感触を感じ始めていた。最後は向こうが「君を傷つけてるだけな気がするからもう話すのはやめよう」と言って関係は終わった。
今でも人生であんなに狂ったことはない、と思うほど、私は彼の行動に傷つけられていた。どれだけ私が彼を想ったか、どれだけ私が彼を心の支えにしていたか、どれだけ私が彼を一番にできないことに心を痛めていたか、それをさも何も知らないように彼は行動をしていた。私は聞いたこともないような声で布団の中で泣き叫んだ。あると思っていたものがないことに気づいたからだ。自分で作り上げた架空の理想の人物に私は多大なエネルギーを使っていたことに気づいた。
ここのところ寒くなってから彼を思い出す。最初に話し始めたのも冬だったからかもしれない。今日はいたずらにアプリの過去のメッセージを遡ってみたら、たまたま彼の連絡先がかかれたものを発見した。そこから先は何もしていない。どうせブロックされている気がするし、例えば彼が私の人生にやってきたとしても、信頼感がまるでないので、何の良い未来も迎えないだろう。
彼の言っていたことは全て嘘だと思うようになった。強いて言えば彼の私に対する思いは真剣だったかもしれない。でも彼が描写する他のもの一切は多分嘘だったのではないか、と考える。
10年以上前に、仲良くなったアメリカ人がいた。毎日のように彼と話していたようだがほぼ記憶にない。なぜ思い出したかというと随分前にLINEに記録が残っていたのを発見したからだ。当時の私にとって外国人は架空の人物と思うくらい遠い存在だったので、今で言うAIと話すのと変わらない感覚だったのではないかと思う。何か質問され、彼に対する恋愛感情が一ミリもないことを伝えると彼は驚愕していた。別に私に対して恋愛感情があったのではなく、自分がその選択肢にすらなってないことに驚いていたのだと思う。
私はこの彼(B)と2年引きずった男(A)が同一人物なんじゃないかと思っている。私がそう思う理由はたくさんあるのだが、証拠は何もない。
・彼らはスペイン語と英語のネイティブで話し方や声が酷似していたこと
・AとBが同じアプリで同じ時期に私と関わらないこと
・AがBのことを昔から知っていってずっと憧れの存在だったと言っていたこと(その仲介役をさせられた)
・AもBもweedが好きだったこと
・Aはたまに地声で話していたが、よくボイスチェンジャーを使って私と通話していたこと
・BがAと話したと言って、私にそれを事細かに教えてきて、間接的に私の気持ちを探るようなことを言っていたこと
・二人ともゲームに余念がないこと
・AもBも今考えれば、にわかには信じられない彼らの人生を私に話していたこと(ドラマティックすぎる)
・どちらも良かれ悪かれ割と簡単に嘘をつくタイプ
あなたを恋愛対象として見てないよ、と言った私を落とすためにAが現れたのではないかと、考えている。
本人たちにも似てるね、と言ったことはあるが、この疑いが自分の中で浮上したのはもうAへの信頼感が消えてからだ。
これを考えると寒気が走る。世の中にそんなことを他の人間に対してやろうと思う人が存在することがとてつもなく怖い。多分この私の中での理由の数と同じくらい、彼らが同一人物でない理由もあったのだと思うが、もう私にはそれを思い出すことができない。
私はあまり人を疑ったりジャッジするタイプじゃないので、ここまでの長い期間Aを信じていたのかもしれない。彼らが同時に同じアプリにいたところは見たことがないが、Aは本格的に話し始める前から何年も私の配信に来てコメントをしていた。彼らがそれを計画してやったとしたら壮大なプランだ。怖すぎる。
ただこの疑いが全くの白だったとしても、ボイスチェンジャーを使って話してくる人の言ってることをまともに受け取ることはもう一生ないだろう。